広範囲の雑草管理を効率よく行える乗用草刈機。現物を目にする機会も少ないため「どれを選んだらよいのだろう?」と悩まれている人も多いはずです。現在使用している人でも、各商品の違いを把握している人も少ないのではないでしょうか。
そこで今回は各メーカーの乗用草刈機を販売してきた私が、価格や性能などを徹底的に比較して商品のおすすめランキングを作成しました。利用する現場ごとに適した機械があるので参考にしてください。
乗用草刈機とは
乗用草刈機とはゴーカートのような外観で、乗って運転しながら雑草を刈ることができる機械の総称です。「乗用モア」と呼んだり「ラビットモアー」「まさおくん」と言い換えられることもあります。
座ったまま草刈りをすることができるので作業者の負担が少ないのが特徴。人力では時間も労力もかかる広い敷地面積の草刈り作業に利用されています。
日本国内で発売されている主な乗用草刈機は、どの機種も800mm以上の刈幅があり時速5km以上で走行することができます。つまり計算上は1時間あたり4,000㎡以上の雑草を刈り取る能力があるというわけです。この効率性の高さが広範囲の草刈り作業に利用される理由となっています。
「スパイダーモア」や「ウイングモア」「ハンマーナイフモア」 など、他の自走式草刈機の草刈り速度は時速2km〜3kmほどです。刈幅も考慮すると乗用草刈機ならば数倍の速さで作業を完了させることができそうです。
乗用草刈機の利用シーン
広範囲の草刈りに使用されることが多い乗用草刈機ですが、具体的には下記のような場所で主に使用されています。
- 果樹園の雑草管理
- 農道の雑草管理
- 休耕田、耕作放棄地、遊休地の雑草管理
- 空き地、不動産の雑草管理
- 太陽光発電所の雑草管理
起伏が多かったり、小回りを必要としたりと、利用するシーンによって求められる性能が変わってきます。購入する前に「何を重要視するのか?」をしっかりと把握することが大事です。
乗用草刈機の主要メーカー3社
株式会社アテックス
アテックスは愛媛県松山市に本社を置く1934年創業の老舗メーカーです。
乗用草刈機の製造は2005年からスタートしており「刈刃王」というブランド名称で発売しています。
現在は二駆モデルが4機種、四駆モデルが1機種の合計5機種の商品展開で、ラインナップを絞り込んでいるという印象。
アテックスは乗用草刈機の他にも歩行式ハンマーナイフモアや、遠隔操縦ができるラジコン草刈機「神刈」も販売しており、ユーザーの利用シーンにあわせた草刈機の提案ができる商品構成となっています。
株式会社オーレック
日本茶の名産地で知られる福岡県八女郡に本社を置くオーレックは、乗用草刈機の国内シェアNo.1のトップブランドです。
2021年6月度の決算資料によると売上高はなんと157億7,900万円!主に草刈り用の機械を製造販売しており、堅調に売上を伸ばしている企業です。
オーレックの商品ラインナップは低価格品から高額品までをバランスよく取り揃えているのが特徴。乗用草刈機においても馬力や刈幅の違いごとに全10種類のラインナップで販売をしています。
オーレックの乗用草刈機は「ラビットモアー」というブランド名称で販売されていますが、「共立」や「ISEKIアグリ」など別の会社からデザインが異なるOEM製品としても販売されています。
株式会社筑水キャニコム
キャニコムはダジャレのような商品のネーミングが有名な福岡県のメーカーです。
昔は動力運搬車をメインで販売していましたが、最近では乗用草刈機や林業機械、建設機械など幅広い製品を扱っています。
2001年に業界初の四駆乗用草刈機「雑草刈車まさお」を発売。現在は二駆モデルが4機種、四駆モデルが4機種の合計8機種を展開しています。
過去の歴史や現在の製品展開をみてもわかりますが、乗用草刈機は特に四駆モデルに力をいれているようです。
乗用草刈機メーカー3社の人気機種を徹底比較
各メーカーの機種を以下の条件で比較してみました。
- 価格の比較
- 草刈り能力の比較
- 操作のしやすさ、快適さの比較
価格を比較
二駆モデルの価格比較
二駆モデルのメーカー小売価格は、オーレックラビットモアー「RM831GX」の726,000円(税込)が最安値となっています。こちらの商品はギアミッション方式の乗用草刈機で、HST無段階変速方式のモデルになると「RM831X」の790,900円(税込)が一番安いモデルとなります。
走行の度に変速作業をしなければならないギアミッション方式よりも、自動車と同じようにアクセルの踏みしろでスピードを変えることができるHST方式の方が断然おすすめです。
一方、アテックスは刈刃王「R8816AB」の891,000円、キャニコムは草刈機まさお「CM2205」の935,000円(税込)が低価格モデルとなります。
「価格が安い機種は性能が劣るのでは?」と心配する人も多いかと思います。確かに高価格モデルと比べると馬力が小さく性能的に劣る面はありますが、コンパクトな設計になっているものが多く狭い場所を走行する際には有利になる場合もあります。草丈の低い雑草地ならば、安価モデルでも十分に対応可能です。
商品 | 税込価格 | 馬力ps | 刈幅mm | 刈高mm |
---|---|---|---|---|
アテックス R8816AB | 891,000円 | 13.7ps | 880 | 10-80 |
アテックス R9520AB | 990,000円 | 17.1ps | 950 | 10-80 |
アテックス R9820AB | 1,026,300円 | 17.1ps | 980 | 10-80 |
アテックス R9824AB | 1,097,800円 | 20.8ps | 980 | 10-80 |
オーレック RM831GX | 726,000円 | 14ps | 820 | 10-70 |
オーレック RM831X | 790,900円 | 14ps | 820 | 10-70 |
オーレック RM883X | 878,900円 | 16ps | 880 | 10-70 |
オーレック RM953X | 943,800円 | 18ps | 950 | 10-70 |
オーレック RM983X | 1,006,500円 | 22ps | 975 | 10-80 |
オーレック RM984X | 1,142,900円 | 24ps | 975 | 10-100 |
オーレック RMT110 | 1,206,700円 | 18ps | 1,100 | 10-80 |
キャニコム CM2205 | 935,000円 | 21ps | 975 | 10-75 |
キャニコム CM2201 | 1,056,000円 | 20.3ps | 975 | 0-150 |
キャニコム CM2403 | 1,067,000円 | 22.4ps | 975 | 0-150 |
四駆モデルの価格比較
四駆モデルのメーカー希望小売価格はキャニコム草刈機まさお「CMX2202」の1,177,000円が最安値となっています。オーレックのラビットモアー「RM983FX」は1,333,200円、アテックスの刈刃王「R9824FB」は1,336,500円の価格設定となっており10万円以上の開きがあります。
オーレックもアテックスも四駆モデルのラインナップは1機種のみです。対してキャニコムは馬力ごとに複数機種を揃えており、四駆モデルに関しては価格的にもバリエーション的にもキャニコムが有利といえるかもしれません。
商品 | 税込価格 | 馬力ps | 刈幅mm | 刈高mm |
---|---|---|---|---|
アテックス R9824FB | 1,336,500円 | 20.8ps | 980 | 10-100 |
オーレック RM983FX | 1,333,200円 | 24ps | 975 | 10-80 |
キャニコム CMX2202 | 1,177,000円 | 20.3ps | 975 | 0-150 |
キャニコム CMX2404 | 1,287,000円 | 22.4ps | 975 | 0-150 |
キャニコム CMX2506 | 1,705,000円 | 23.3ps | 975 | 0-170 |
四駆モデルは二駆モデルに比べると大きな価格差がありますが、凹凸の多い場所や軟弱地など、どうしても四駆モデルが欠かせない現場があります。価格だけを参考にするのではなく、現場にマッチした能力を確認して購入するようにしましょう。
草刈り能力を比較
刈刃の駆動方式
乗用草刈機は車体下部にある刈刃を回転させて雑草を刈っていきます。その刈刃を回転させる駆動方式が各社で異なります。
ベルト駆動方式 | シャフト駆動方式 |
---|---|
オーレック アテックス | キャニコム |
オーレックとアテックスはエンジンの回転をVベルトを介して刈刃に伝えています。このベルト駆動方式は構造が単純なだけにトラブルが起こった際の対処が容易なこと、そしてベルトの部品単価が比較的安いことがメリットとして挙げられます。
一方、キャニコムが採用しているシャフト駆動方式はベルトのように「滑り」や「たわみ」がないため、エンジンの駆動力を刈刃へダイレクトに伝えることができます。そのため背丈の高い雑草や、密集した雑草地でもパワフルに刈っていくことが可能です。
刈高さの最大値
平地ならばあまり問題はありませんが、凹凸の激しい休耕田や荒地を走行する際に重要となってくるのが「刈高さの最大値」です。
乗用草刈機は起伏を乗り越える時に機械下部の回転刃が地面に当たってしまうことがあります。地面に当たると刃の消耗や機械へのダメージもあるため、凹凸のある場所ではなるべく刈高さを高くしたいところです。
キャニコムの乗用草刈機は刈高さの最大値が150mm。(四駆モデルだと170mmの機種もあります)次いでオーレックの100mm、アテックスの80mmとなっています。
操作のしやすさ、快適さを比較
操作レバーの位置
操作レバーの位置も各社で違いがあります。乗用草刈機には足元にある走行ペダルの他に、手元で移動速度を調整する変速レバーがついています。また走行しながら刈高さを調整するための刈高調整レバーも逆サイドに設置されています。
この二つのレバー位置がアテックスとオーレックは同じで、キャニコムは真逆に取り付けられています。どちらの方が操作しやすいかは個人の感覚によりますが、もし手動変速レバーを多用するならば利き手側に設置されているほうが使いやすいかもしれません。
座席シートの形状
アテックスは全てのモデルで共通の座席シートが使用されていますが、オーレックとキャニコムは安価モデルとミドルクラス以上のモデルとでシート形状が異なります。
ミドルクラス以上のモデルに関して言えば、どのメーカーのシートも座り心地は良く、長時間の使用でも疲れにくいという印象です。
その中でも特筆すべきはオーレックが採用しているメッシュシートでしょう。夏場の炎天下の中で乗用草刈機に座っていると、お尻が汗ばんだり蒸れてくることも。
しかしメッシュシートならば通気性を保てるので快適に過ごすことが可能です。ただしメッシュ穴に刈ったあとの草やホコリが詰まりやすいので、掃除は必須です。
果樹園管理の乗用草刈機ランキング
果樹園では広大な敷地を常に管理する必要があるため、馬力や耐久性、メンテナンス性などバランスの取れた乗用草刈機が必要となります。比較的傾斜の少ない果樹園であれば四駆モデルは不要となるので、二駆モデルでの比較としました。
果樹園では広大な敷地を常に管理する必要があるため、馬力や耐久性、メンテナンス性などバランスの取れた乗用草刈機が必要となります。比較的傾斜の少ない果樹園であれば四駆モデルは不要となるので、二駆モデルでの比較としました。
1位 オーレック(共立/イセキ)ラビットモアー RM983X
オーレックの二駆モデルの中で最も馬力の高いRM983Xを1位としました。走破性が高く、パワフルに雑草を刈っていきます。非常に使いやすいので多くの果樹農家からの支持を得ており、旧モデルRM980からの乗り換えもよく聞きます。
2位 オーレック(共立/イセキ)ラビットモアー RM953X
2位に挙げたのは1位と同じくオーレック製のRM953Xとなります。RM983Xと比べると馬力が落ちますが、18馬力もあれば腰丈までの雑草くらいならば難なく刈っていくことが可能です。購入しやすい価格もおすすめポイントです。
3位 アテックス 刈刃王 R9824AB
アテックスのR9824ABも性能的には申し分ないのですが、コストパフォーマンスの面で3位としました。
農道管理の乗用草刈機ランキング
農道管理においても性能の優れた乗用草刈機を使用するに越したことはありません。しかし田畑の管理を行うためには様々な機械が必要であるため、予算を圧迫しない安価でコストパフォーマンスの高い機械を基準としランキングとしました。
1位 オーレック(共立/イセキ)ラビットモアー RM831X
HST無段階変速方式モデルの中では最も安いオーレックのRM831Xを1位としました。上位モデルと比べると20万円以上も安く、初めて使う人も購入しやすいはずです。14馬力ということで少しパワーに物足りなさを感じますが、膝丈までの雑草が生えた農道管理ならば問題なく使用することができます。
2位 オーレック(共立/イセキ)ラビットモアー RM883X
おなじくオーレックのRM883Xが2位にランクイン。RM831Xよりも馬力の高い16馬力なので、農道の管理以外にも利用できるでしょう。
3位 アテックス 刈刃王 R8816AB
第3位はアテックスのR8816AB。馬力は14馬力でRM831Xと同等クラスではありますが、刈幅が少し広い880mmとなっています。
休耕田、放棄田、遊休地管理の乗用草刈機ランキング
休耕田、放棄田、遊休地などは凹凸が多く草刈りの難易度が高い現場となります。二輪駆動の機械では走破できない場合もあるため「四輪駆動であること」を最低条件とし、刈高さの最大値などを考慮しながらランキングとしています。
1位 キャニコム 草刈機まさお CMX2202
四駆モデルで最もコストパフォーマンスが高いのがキャニコムのCMX2202。刈高さの最高値が150mmとなっており、起伏への対応も難なくこなせます。キャニコムの四駆モデルは二駆と四駆を手動で切り替える方式です。普段は小回りしやすい二輪駆動で、悪路の場合のみ四輪駆動に切り替えると良いでしょう。また、独自のシステム「イアイ」により、工具を使わずに刈刃を交換することができるのも魅力の一つです。
2位 キャニコム 草刈機まさお CMX2404
2位もキャニコム製品がランクイン。CMX2404は22馬力のホンダエンジンを搭載しており、荒地の走破製はもちろん、背丈の高い雑草もパワフルに刈りこんでくれます。高出力エンジンの安心感を感じる事ができるはずです。
3位 オーレック(共立/イセキ)ラビットモアー RM983FX
オーレックの四駆モデルRM983FXは100mmまでの刈高さに対応。オーレックの四駆モデルは高負荷が掛かると二駆から四駆に自動で切り替わる方式となっており不意の悪路でも安心です。
空き地、不動産管理の乗用草刈機ランキング
もともと住宅地であった空き地ならば、路面の状態は安定していると考えられ二輪駆動のモデルで問題ないかと思われます。しかし放置されている空き地には茎が太くなった雑草が密集しているはず。そういったシーンを想定し馬力の高い二駆モデルを基準としてランキングしました。
1位 キャニコム 草刈機まさお CM2201
キャニコムのCM2201は刈刃の回転がシャフト方式のなのでパワーロスなく、20馬力のエンジン駆動力をフルに発揮する事ができます。背丈ほどの高さがあるセイタカアワダチソウなどもガンガン刈っていくので、放置された空き地の管理に最適です。
2位 オーレック(共立/イセキ)ラビットモアー RM984X
オーレックの最上位機種のRM984Xはデジタルインジケーターを装備。バッテリー残量や機械の状態を把握しやすく、安全性やメンテナンス性が考慮された一台です。
3位 アテックス 刈刃王 R9824AB
アテックスR9824ABは20.8馬力のカワサキエンジンを搭載しています。前輪400mm、後輪440mmの大径タイヤが採用されており、四駆並みの走行性能が特徴となっています。
乗用草刈機の作業で便利な用品
乗用草刈機を使えば効率よく草刈りをすることができますが、より快適に利用するための商品も紹介します。こちらもぜひ参考にしてください。
空調ウェア
近年は異常な暑さで草刈り作業中の熱中症リスクが高まっています。服の中に空気を取り込む事ができる空調ウェアで暑さ対策を講じるようにしましょう。
充電式草刈機
乗用草刈機は広範囲の草刈りに有効ですが、細かい仕上げには不向きです。そのため手持ち式の草刈機もあわせて使うのが定番です。充電式草刈機はエンジン式の草刈機に比べると騒音や振動も少ないのでおすすめ。高性能な機械を併用して楽な草刈り作業を目指しましょう。
充電式ブロワ
乗用草刈機のメンテナンスに欠かせないのがブロワです。刈った後の細かい草やホコリがエンジン周辺に溜まるとトラブルの原因となります。ブロワで吹き飛ばして機械を綺麗に保つようにすると、長持ちさせる事ができるでしょう。