水田の雑草対策に!おすすめの水稲用除草剤と時期に合わせた体系処理を解説

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水稲農家を悩ませるの課題の一つが雑草問題です。環境の変化に伴い、近年は雑草の生育スピードも早く、その対策に頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。そこで当記事ではそんな水稲栽培の雑草対策に有効な除草剤の解説をしていきます。

目次

一般的な除草剤と水稲用除草剤との違い

一般的な除草剤は広範囲の雑草を一度に枯死させるために開発されています。

これらの除草剤にはグリホサートやグリホシネート、ブロマシルといった成分が含まれており、散布された場所の植物を無差別的に枯らす効果があります。このような除草剤を「非選択性除草剤」といいます。

もし非選択性除草剤を水田内に撒いてしまうと雑草だけでなく、作物である水稲も全て枯死してしまい、農業経営に大打撃を与えることになってしまいます。

もし畦畔で除草剤を使用する際は細心の注意をはらうようにしましょう。できれば畦畔の除草作業は薬害の心配がなく、効率的な機械の利用をおすすめします。

一方、水稲用の除草剤は水田の中に生えてくる雑草のみに効果を発揮し、水稲の品質に影響を与えません。こうした特定の雑草のみを選んで対応できる除草剤のことを「選択性除草剤」といいます。

古くは手押しの除草機を使い時間をかけ除草作業をしていましたが、除草剤や農薬の技術革新によって省力化だけでなく水稲の収穫量も大幅に増加しました。

今では水稲用除草剤は水稲農家にとって欠かせないものとなっています。

水稲用除草剤の効果

水稲用除草剤は作物の品質や収量に影響を与えずに雑草にだけ効果を発揮することが特徴的です。その効果の仕組みとしては「土壌処理」「茎葉処理」の2種類のアプローチがあり、雑草の種類や時期によって使い分けたり組み合わせたりします。

水稲用除草剤における土壌処理効果の仕組み

水稲用除草剤における土壌処理効果の仕組み

水稲用除草剤を水田に散布すると水中に成分が溶け出し、やがて土壌表面に吸着して薄い除草剤の処理層が作られます。

移植後の稲は処理層の上部に成長点があるので影響を受けませんが、発芽直後の雑草は処理層に触れることで枯死します。これが水稲用除草剤における土壌処理効果の仕組みです。

水稲用除草剤における茎葉処理効果の仕組み

水稲用除草剤における茎葉処理効果の仕組み

水稲用除草剤の土壌処理効果は雑草の発芽時に効き目を発揮しますが、すでに生育中の雑草には効き目がありません。

そこで利用されるのが茎葉処理効果のある除草剤です。雑草の茎や葉から有効成分を吸収させ枯死させていきます。

成分は雑草だけでなく水稲も吸収しますが、水稲と雑草との成分吸収率の違いや成分を分解するスピードの違いなどを利用し、作物の品質や収量に影響が無いように設計されています。

水稲用除草剤の種類

水稲用除草剤にはたくさんの種類があり、どれを選んでよいのか迷ってしまいますが、まずは2つの「選ぶポイント」があることを押さえておきましょう。

  • 使用時期による分類
  • 除草剤の形状による分類

使用時期による分類

水稲用除草剤には稲作の時期に応じて使い分けられる4つの種類に分けられます。

  • 初期除草剤
  • 初期一発除草剤
  • 初中期一発除草剤
  • 中後期除草剤

初期除草剤

初期除草剤は代かき〜水稲の移植直後、雑草の発生前に使用する除草剤です。土壌処理効果が高いのが特徴で、主にノビエの発生を抑制する目的で使用されます。

効果はおよそ2週間程度なので、以後は一発除草剤や中後期除草剤などを連携使用して多種の雑草発生を防除していくのが一般的となっています。

初期除草剤のおすすめ

日産化学 マーシェット

有効成分はブタクロール10%で1年生雑草はもちろん、近年問題化されているホタルイやアゼナなどにも高い効果を示します。田植え同時散布が可能で一発除草剤や中期剤につなぐ初期除草剤として人気があります。

初期一発除草剤

初期一発剤は多年生雑草の多くの種類に効果があり、残存期間も30日から50日ほどと長いため多くの水稲農家で使用されています。特徴は初期除草剤と同じく土壌処理効果が高く雑草の発芽を抑制します。

初期一発除草剤は田植え直後の散布が基本。処理層を生成するために、水田の水の動きを止めて成分をしっかりと沈着させることがポイントとなります。

水が外に流れ出してしまうと除草成分も外に出てしまいますので、必ず1週間ほどは止水を行ってください。

初期一発除草剤のおすすめ

シンジェンタ マキシーMX

田植え同時処理が可能で作業効率が高いのが特徴。天然由来の抵抗性雑草対策成分であるメソトリオンが、発生後のSU抵抗性雑草(ホタルイ、コナギ、ミズオアオイ等)をスピーディーに除草。プレチラクロールとの相互作用で、ノビエ等の一年生雑草にも高い効果を発揮します。

初中期一発除草剤

初期一発除草剤が田植え直後からノビエ2葉ごろに散布するのに対して、初中期一発除草剤は通常、田植え後5日以上経ってから散布します。

1回の処理で初期から中期までの期間をカバーできますが散布の時期が非常に重要です。代かきから10日以内、雑草の育成前に散布するように注意してください。

初中期一発除草剤のおすすめ

日産化学 銀河

除草成分の「アルテア」が問題雑草であるクログワイ、ホタルイ、コウキヤガラなど多年生雑草の地上部だけでなく地下茎にもアタックする初中期一発除草剤です。さらにSU抵抗性雑草への効果も強化しているため、オモダカやコナギなどもしっかりと防除できます。

中後期除草剤

田植えから20日以降に使用するのが中期、後期除草剤です。初期除草剤や一発剤で除去しきれなかった雑草に対して使用されます。

中後期除草剤は初期除草剤のような「土壌処理効果」よりも、「茎葉処理効果」が高いのが特徴。雑草の茎や根から有効成分を吸収させて雑草の成長を抑制する効果があります。

中後期除草剤のおすすめ

日産化学 クリンチャーバスME

発芽後から5葉期までのノビエに効果を示し、生育の進んだ広葉雑草にも高い効果を示します。茎葉部から成分が吸収されるタイプですが、水稲に対して優れた選択性を有しています。

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形状による分類

水稲用除草剤は剤の形状も様々でそれぞれ特性や散布方法が違います。以下に代表的な分類を紹介します。

  • 1キロ粒剤
  • ジャンボ剤
  • 豆つぶ剤
  • フロアブル剤

1キロ粒剤

1,000㎡(10a)に対して1キロの剤を使用する粒剤のことを「1キロ粒剤」と呼びます。古くは3キロ粒剤というものが存在していましたが、重量によるの運搬負担の問題から、より少量で効果を発揮する1キロ粒剤が開発されました。

動力散布機や散粒機などを使用したり、田植え機にセットした除草剤散布機を使用して散布します。

1キロ粒剤のおすすめ

住友化学 兆

兆はノビエをはじめ幅広い雑草に効果のある初期除草剤です。有効成分はピラクロニルの1つで、SU抵抗性雑草にも有効です。使い方としては代かきから移植7日前までに、または移植時に散布。直播水稲にも使え、無人航空機による散布も可能です。

ジャンボ剤

ジャンボ剤は投げ込み式の水稲用除草剤の総称で1990年代に登場しました。1キロ粒剤の誕生と同様に省力化のために開発され、水田内に入ることなく畦畔から投げ込んで使えるようになっているのが特徴です。

水溶性のフィルムに粒剤がパック包装されており、水田に投げ入れるとすぐにフィルムが溶け出して中の粒剤が出てきます。そして水面に浮かびながら粒剤が拡散していき、やがて全体に行き渡ります。

30a程度ならば水田に入らなくても畔から投げ込むだけで散布できる便利な剤です。

ジャンボ剤のおすすめ

住友化学 クラッシュEX

クラッシュEXは一発処理除草剤で、地域によって異なりますが移植後3日から10日前後ぐらいの間に散布します。田んぼの中に入らず畔から投げ込むだけで散布が可能。10aあたり500グラム(10パック)を撒くだけなので、大きな省力化につながります。

豆つぶ剤

豆つぶ剤は10aあたりの使用量がたったの250gでよく、軽量で省力的なのが特徴です。

散布すると沈むことなく水面を浮遊し、風がなくとも自己拡散していきます。軽量ゆえに様々な散布方法にも対応しており、畔からの手撒きや、ひしゃくを使った散布、動力散布機やドローンなども散布に活用されています。

釣りのコマセを撒くひしゃくならば1,000円程度で購入することができ、小規模農家ならばコストをかけることなく効率的に散布することが可能です。

豆つぶ剤のおすすめ

初中期一発除草剤であるジャンダルムMXはピリフタリド、ピリミスルファン、メソトリオンといった3つの成分が効果を発揮。ノビエはもちろん、SU抵抗性のある各種雑草やクログワイやオモダカなどの多年生雑草に特に有効です。

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フロアブル剤

フロアブル剤は液体状の薬剤で、微粉化された農薬原体に分散剤や界面活性剤が加えられ水で懸濁されています。保存していると容器内で成分が分離することがあるので、よく振ってから利用するようにしてください。

幅が30mまでの圃場ならば水田内に入らずに畦畔を歩きながら撒くことができます。また水口にフロアブル剤を流し込み、水流を利用して全体に拡散させる方法もあります。

フロアブル剤のおすすめ

イネキングは移植時から使用できる水稲用初中期一発除草剤です。有効成分ピラクロニル配合で、効果の発現が早く、ALS阻害剤抵抗性雑草(アゼナ、コナギ、ホタルイ等)にも高い効果を発揮。3成分の相互作用で幅広い草種に有効です。

水稲用除草剤の体系処理

様々な種類の除草剤がありますが、どれか一つだけで対応するのは非常に難しく、複数の除草剤をリレーさせて長期間の雑草発生を防ぎます。

これを「体系処理」といい、水田除草で有効な手段とされています。ただし除草剤ごとに使用可能回数が決まっているのでラベルをよく読み、使用方法に従ってください。

体系処理の例としては、初期除草剤を使用したのちに初中期一発除草剤を。あるいは初期一発剤の後に中後期除草剤といった形で別々の性質の除草剤を連携して使用します。

注意点としては、同系列の成分を避けること。そして年ごとに別の成分の除草剤を使用した方が良いという点です。

雑草が除草成分に抵抗性をもつことがあり、そうなると防除が困難になってしまいます。「この除草剤が効いたから今年も同じ商品を使おう」と固定化させずに様々な除草剤をローテーションすることをおすすめします。

水稲用除草剤の効果を高めるポイント

代かきを丁寧に均平な田面をつくる

土壌が均平でない場合の薬害発生について

水稲用除草剤の効果を高めるためには、代かきをしっかりとおこなうことが大切です。土壌が均平でないと浅植え、深植えのようにムラのある植え付けになってしまいます。

もし作物が薬剤の土壌処理層に浅く植えられると除草成分により薬害がおこる可能性があります。また土壌が隆起している場合、処理層が形成されずに除草効果が出ない場合があります。丁寧に代かきをおこない、凸凹が少ない田面にしましょう。

深水で灌水状態を長く保つ

水管理も除草剤効果を高めるために欠かせない要素です。除草剤散布時はできる限り深水にして、灌水状態を長く保つことがポイントです。

薬剤が土壌に定着するまでに落水することがないよう、苗が浸かるくらいにしっかりと水を入れたほうがよいでしょう。そして除草剤散布後7日間は止水することを徹底してください。

まとめ

水田の除草処理では複数の除草剤を連携させながら使用する「体系処理」が有効です。

時期や雑草の種類にあわせた除草剤選び雑草の発生を抑えることで作物の品質と収量アップを目指すようにしましょう。

また、雑草の発生状況や除草剤の使用状況を記録しておけば次年度の除草計画が立案しやすくなるのでおすすめです。

なお、地域や除草剤の種類によって除草剤の使用方法が異なりますので、ラベルに表示されている内容をよく読んだ上で適切に取り扱うようにしてください。

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